大判例

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大阪地方裁判所 昭和41年(ワ)4490号 判決

原告

松井重和

被告

親和タクシー株式会社

第一主文

一、被告は原告に対し、八三〇、九〇〇円および内金七六〇、九〇〇円に対する昭和四一年九月一九日から、残金七〇、〇〇〇円に対する本判決言渡日から、各支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告のその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用はこれを三分し、その一を原告、その余を被告の負担とする。

四、この判決一項は、かりに執行することができる。

第二原告の申立て

被告は原告に対し、一、四六五、六〇〇円およびこれに対する昭和四一年九月一九日(訴状送達翌日)から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員(遅延損害金)を支払え。

との判決ならびに仮執行の宣言。

第三争いのない事実

物損交通事故発生

とき 昭和四一年五月二一日午後九時四五分ごろ(風雨強し)

ところ 豊中市走井一二番地先交差点

事故車 (1) 営業用普通乗用自動車(兵五う四四〇九号)

(2) 自家用普通乗用自動車(大五み一五一八号)

(3) 自家用普通乗用自動車(大五す五一四七号)

運転者 (1) 被告従業員訴外加藤明(業務中、以下事故車(1)を被告車という)

(2) 訴外大木健誠(以下事故車(2)を訴外車という)

(3) 原告(以下事故車(3)を原告車という)

態様 衝突、接触により各車両破損。

第四争点

(原告の主張)

一、被告の責任原因(民法七一五条)

原告車が信号に従い右交差点を南から北に進行していたところ、訴外加藤が被告車を運転し北から西に右折してきて、原告車の右斜め前方を進行中の訴外車に衝突し、その反動で訴外車を原告車右横部に衝突させ、原告車の右前横部を破損した。

いうまでもなく、自動車運転者たる者は、信号機のある交差点においてその表示する信号に従うべき義務があるが、訴外加藤は車両用信号の右折指示が出ていないのにかかわらず、右交差点に進入右折しようとした過失により、右衝突事故を起こしたものである。

二、原告の損害

原告車は訴外宏栄株式会社の所有名義になつているが、同会社は資本金二五〇万円、社員七名の原告(右代表取締役)の個人企業を会社組織にした、いわゆる個人会社であつて、会社の損害は原告個人の損害と同視しうる。かりにそうでないとしても、原告は原告車を通勤用として使用していたうえ、本件事故もその通勤中に発生したのであるから、右事故による原告車の破損については、原告において右会社に対し後記(1)、(2)の損害を賠償すべき義務を負担し、同額の損害をこうむつたものである。

(1) 原告車修復費 一、一一五、六〇〇円

原告車はフランス制プジヨー四〇四型であるが、その修理を訴外新東洋自動車株式会社に依頼したところ、右金額の修理費見積りを受けた。この見積額には、部品をフランスより輸入するための費用も含まれているが、当時これらの部品を同国より輸入するよりほか修理の方法がなかつたものである。

(2) 破損による原告車価格低下損 二〇〇、〇〇〇円

原告車はわが国において希少価値を有するものであるが、事故により破損したため、たとえ修理しても売却時において、事故車なるがゆえに少なくとも右金額の時価低下は免れない。

(3) 弁護士費用 一五〇、〇〇〇円

原告は被告に対し損害賠償金の請求をしたが、被告はこれに応じないので本件訴訟提起の必要に追られた。しかし、原告は法律的に無知なため、原告代理人弁護士両名に右訴訟追行に関する一切を委任した。そして、右代理人に支払うべき報酬に関し、原告は手数料として五〇、〇〇〇円を支払い、解決のうえは得たる利益の一〇パーセントを支払う旨約した。したがつて、原告が右代理人に支払うべき弁護士費用は一五〇、〇〇〇円を下らないところ、これは現行大阪弁護士会報酬規定に照らして相当金額であり、かつ被告の負担すべき原告の損害である。

(被告の主張)

一、原告の過失

本件事故は原告車が被告車に追突したものである。当時激しい雨の最中であつたが、かかる天候および交差点においては、自動車はいつでも停止できるよう徐行しなければならないのに、原告は徐行を怠り漫然運行した過失により右事故を起こした。

二、損害について

(1) 修復費

大阪自動車鑑定人協会の損害鑑定によると、原告車修理費はせいぜい三〇〇、〇〇〇円にすぎないものとされている。

(2) 弁護士費用

被告は原告の過大な請求に応じられないとするのみであつて、正当な損害については交渉に応じてきたものであるから、弁護士費用は原告の過大請求により生じたもので、被告に支払いの義務はない。

第五証拠 〔略〕

第六争点に対する判断

一、被告の責任原因(民法七一五条)

〔証拠略〕を総合すると、つぎの各事実が認められ、反対の証拠は信用しない。

(1) 本件事故現場交差点付近の状況は、別紙現場見取図のとおりであり、自動車の最高速度は五〇キロメートル毎時と定められていた。

(2) 袂告車の運転者訴外加藤は、時速約四〇キロメートルで北から南に向け進行し、右交差点を西に右折すべく白ペイントの矢印に従つて時速約三五キロメートルで交差点に進入したが、その直前右見取図(以下同じ)A信号が青を示しているのを確認したのみで、車両用信号Bがまだ右折表示を出していないのに、同信号を見落としたまま右折を開始したため、2点付近で訴外車口に気づいたがなんらの回避処置もとりえず同車右前部に自車左前部を衝突させた。

(3) 訴外車の運転者訴外大木は、時速約五〇キロメートルで南から北に向け進行中、対面のC信号が青を示しているのを確認して右交差点に接近したが、イ点において右斜め前方から進路上に進んでくる被告車1を認め危険を感じ、急制動の処置をとるとともに、ハンドルを左に切り衝突を避けんとしたが及ばず、ロ点において自車右前部と被告車左前部が衝突し、その反動で自車はハ点に進んで停車した。

(4) 原告は時速約四五キロメートルで南から北に向け訴外車左後方を進行中、い点付近にさしかかつたとき訴外車が目前にかぶさるようにしてきたので、危険を感じ急制動の処置をとつたが及ばず、訴外車の陰から現われた被告車左後部と自車右前部が衝突するに至り、自車はろ点に、被告車は3点に停車した。

以上認定の事実によると、本件事故は被告車の運転者訴外加藤のB信号表示に違反した過失により生じたことが明らかであるが、右事故の発生につき原告にも過失があつたかどうかは不明であり、他に原告の過失を認めうる証拠はない。

二、原告の損害

〔証拠略〕によると、原告車はプジヨー四〇四型であり、訴外宏栄株式会社がこれを昭和四〇年七月二〇日、訴外新東洋企業株式会社から新車価格一七五万円で購入したものであるが、原告は右宏栄株式会社の代表取締役として原告車を通勤その他個人用務にも使用していたことが認められる。

原告は、右宏栄株式会社の個人会社性を理由に、原告車破損による損害は原告個人の損害と同視しうる旨主張するが、両者が法人格を異にする以上、右主張はたやすく彩用しがたい。しかしながら、右認定の事実によると、原告は右会社に対し善良な管理者としての注意をもつて原告車を運転すべき義務を負うものと認められるから、これを破損した場合は、自己の無過失を証明しないかぎり、右会社に対し損害賠償義務を負担するものというべきである。しかるところ、前説示のとおり本件事故の発生につき原告に過失があつたかどうかは証拠上不明でその無過失は認めがたいので、原告は原告車の破損により生じた後記(1)の損害を右会社に対し賠償すべき債務を負担し、同額の損害を受けたものといわなければならない(なお、訴外宏栄株式会社は原告から右損害賠償債務の履行を受けないかぎり、被告に対しても同額の賠償請求権を有するが、この請求権と原告の被告に対する後記損害賠償請求権は連帯債権の関係に立つものと解すべきである)。

(1) 原告車修復費 七一〇、九〇〇円

〔証拠略〕によると、事故後早急に右破損か所を完全に修復するには、フランスからの新部品取寄せ航空便代を含め一、〇九七、一〇〇円(部品代九六五、五〇〇円、修理代およびけん引料一三一、六〇〇円)の費用を要するものであつたことが認められる(反対趣旨の証人石戸誠二の証言は、同人が原告車の破損状況を精査しないままなした大ざつぱな見積りにもとづくものであるから、たやすく信用しがたい)。

ところで、前認定のように、原告車は本件事故の約一〇か月前に新車価格で購入されたものであるが、証人高橋隆円、石戸誠二の各証言によると、右事故当時における価格は新車価格の約六〇パーセントであつたことが認められるので、反証のない以上、その各部品も同程度の価格低下をきたしていたものと認めるのが相当であり、したがつて、修復に要する部品については、前記新部品代金額ではなく、その六〇パーセントたる五七九、三〇〇円をもつて、右事故による損害と認めるべきである。

とすると、原告が被告に対し前記修復費用として賠償を求めうべき金額は七一〇、九〇〇円(部品代内金五七九、三〇〇円、修理代その他一三一、六〇〇円)となる。

(2) 破損による原告車価格低下損 証拠不十分

(3) 弁護士費用 計一二〇、〇〇〇円

(イ) 手数料 五〇、〇〇〇円

(ロ) 報酬 七〇、〇〇〇円

(〔証拠略〕)

三、結論

被告は原告に対し、以上損害合計八三〇、九〇〇円および内金七六〇、九〇〇円に対する昭和四一年九月一九日から、残金七〇、〇〇〇円(前記弁護士報酬)に対する本判決言渡日から、各支払いずみに至るまで年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。

よつて、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 谷水央)

〔別紙〕 現場見取図

<省略>

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